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掲載日2025.08.24
2025.08.24

小説『この夏の星を見る』


さて、今回は、中の人がこの夏に読んだ本をご紹介します(^^)
『この夏の星を見る』(辻村深月 KADOKAWA/角川文庫)。

2020年の夏を覚えていますか?
コロナ禍の真っ只中。マスク生活、ソーシャルディスタンス、イベント中止・・・。
日常の「いつもどおり」が消え、制限だらけだったあの夏。
終わりの見えない不安を抱えて過ごしたあの夏。
そんな2020年の日本を舞台にした、星空を愛する中高校生たちの物語です。

「いつもどおりに、ふつうに」人とつながることができない。
晴れ舞台となるはずの様々な大会も中止で、やるせなさと閉塞感が漂う学校生活。
そんな中で「離れていても、会えなくても、空はつながっている」と「スターキャッチコンテスト」を計画し全力で挑戦する東京、茨城、長崎の高校生、中学生たち。
彼らは、コロナを逆手に取るようにオンライン会議を駆使し、やがて距離も校種も超えて絆を深めていきます。そしてその活動は大きな流れとなり、さらに新たな展開へと・・・。

ネタバレ防止のため、詳しくは書きませんが、何度も涙がこぼれそうになりました。
コロナ禍の空気感を思い出すから余計にそうなのでしょうね。
友情やほのかな恋愛、青春特有の不安や葛藤などのサイドストーリーも随所に散りばめられ、その煌めきはまさに星空のごとく、です。

また、天文に関してのトリビアも数々盛り込まれていました。たとえば
・天体望遠鏡は手作りできる
・木星はガス天体なので宇宙船の着陸は困難(&生命体も期待薄)
・八千年後は別の星が北極星になる
などなど、私にとっては「へえ~!」もてんこ盛りで、結構よい勉強になりました(^^)
そうそう、巻末の解説はあの宇宙飛行士、山崎直子さんですよ。これも必読です。
(山崎さんをモデルにしたと思われる人物も作中に登場!)

で、もうひとつ。
この中高校生を支える大人たち(学校の先生や天文台の方々)がまた素敵なんです。
どんなときも生徒たちを温かく見守り、さりげなく手を差し伸べてくれる。
自分の考えを押し付けることはないけれど、生徒が迷っていればちゃんと背中を押してくれる。
生徒の気づかないところで、実は周到に準備や根回しをしてる。
・・・などなど、「こども文化科学館の職員として、かくありたい」と思った次第です。

8月も終盤ですね。
残暑厳しき折、どうか皆様おすこやかにお過ごしください。

(ちなみに今回の掲載写真は、8月2日の天体観望会のときの望遠鏡です^^)