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掲載日2018.06.07
2018.06.07

ブラックホールの大きさは?

ブラックホールの大きさは?

“ブラックホール”この言葉については,こどもから大人まで多くの方がご存知ではないかと思います。近づくものはなんでも飲み込んでしまい,この世で最も早い光のスピードでも脱出することは不可能,なんか恐ろしいイメージですね。でも,その分皆さんにとって関心の高い天体の一つではないでしょうか。では,ブラックホールにどれほど近づくと飲み込まれて脱出できなくなるのでしょうか。ブラックホールの大きさを考えたいと思います。

ブラックホールが何かと考えると,最先端の物理学であり,難解な一般相対性理論を使い,分厚い教科書ができるほどのことなので,深くは考えずに,現象や結果だけを見ていくことにしましょう。ブラックホールは非常に重い星(太陽の数十倍以上の恒星)の最期と考えられています。最期に自分自身の重さ(質量と言います)に耐えきれずにつぶれてしまった状態の天体がブラックホールです。つぶれるということは一点になってしまうということです。これは大きさがない,でも質量がある,つまり密度が無限大の天体ということです。大きさが無いのであれば,“ブラックホールの大きさって無いじゃないか”と思われるかもしれません。でも,質量だけはあるのです。ということは,ブラックホールによる重力,引っ張る力があるのです。そこでこの重力が及ぶ範囲で,光のスピードでも脱出することができない限界を,ブラックホールの大きさと考えています。

では,この大きさはどのくらいになるのでしょうか。一般相対性理論から導かれるものは,ブラックホールの質量をMとすると,その大きさ(半径)RSは右の式のようにあらわすことができます。



どうですか,以外にも簡単な形とは思いませんか。結果だけを見ると,中学生以上であればブラックホールの大きさを求めることができそうですね。ただしこの結果を導くためには以下の仮定が用いられています。
・ブラックホールが持っている情報としては質量のみ
・電荷をもっていない(電気を帯びていない)
・静的である(時間変化がない,回転していない)
・球対称である(簡単に言えば丸い)。
・ブラックホールが無限に平坦な空間の中にある
この仮定を用いて最初にブラックホールの大きさを導いた人は,ドイツのカール・シュバルツシルドという天文学者・物理学者で,1916年のことでした。そこで,このブラックホールをシュバルツシルドブラックホール,大きさのことをシュバルツシルド半径と呼んでいます。


カール・シュバルツシルド(1873-1916)

早速,大きさを求めてみましょう。理科年表2018より



と考えて,



となります。後は,ブラックホールの質量(単位はkg)が分かればいいですね。宇宙にある天体はかなり重いと想像できます。そこで,質量を太陽の質量を基準に考えることにします。天文学では太陽の質量を基準に考えることが多いのです。太陽質量はM⨀と表し,



ということが分かっていますから



となります。つまり,非常に重い星の最期がブラックホールでしたから,太陽の20倍重い星がブラックホールになったとすると,その大きさは約60kmとなります。また,太陽と同じ質量のブラックホールがあったとすればその大きさは3kmです。思ったほど小さいと思いませんか。地球の直径は約12,000㎞,月の直径が約3,500㎞であることを考えると,ブラックホールってとても小さい天体ですね。

しかし,宇宙には恒星の最期であるブラックホールとは別のブラックホールがあります。宇宙にたくさんある銀河の中心に存在すると考えられる超巨大ブラックホールです。これは質量が太陽の一億倍以上と考えられています。すると,ブラックホールの大きさも数億km程度と考えられ,かなり大きいです。でも,地球から太陽までの距離がおよそ1.5億km,太陽系の中で一番遠い惑星である海王星と太陽の距離がおよそ45億kmを考えると,やはりそれほど大きくないと思いませんか。