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掲載日2018.03.04
2018.03.04

木星はなぜ大きい

科学館のプラネタリウム入口へ上がる階段(3階から4階へ)の途中の壁に,太陽系内の天体が描かれていることにお気づきでしょうか。太陽と8個の惑星、そして準惑星である冥王星(2006年までは惑星でした)の10個の天体について、各々の大きさを同縮尺(およそ1億分の1)で描いています(なお、天体間の距離は考慮していません)。
ここで惑星の大きさを比べると、一番大きい惑星は木星で、その次は土星,そして一番小さな惑星は水星であることがわかります。さらに,この壁に描かれた惑星をよく観察すると,大きさの違いにより、水星・金星・地球・火星のグループ、木星・土星のグループ、そして天王星・海王星のグループのように,3グループに分けることができ,それぞれ,地球型惑星,木星型惑星,そして天王星型惑星と呼んでいます。これらのグループは,大きさの違い以外に,惑星を作っている成分にも違いがあります。地球型惑星は主に岩石,木星型惑星はガス(気体),そして天王星型惑星は主に氷から作られています。この成分の違いや,惑星の大きさの違いは,太陽系がどのように作られてきたかを考えると理解することができます。


3階から見た様子(太陽,水星,金星,地球,火星,木星,土星)


踊り場から見た様子(土星,天王星,海王星,冥王星)

まず,原始惑星系円盤の中心部分に集まったガスから太陽ができています(下図①)。周りの円盤では,チリなどがお互いの重力で引き合い,大きさが10kmほどの微惑星ができます(下図②)。さらにできた微惑星は衝突・合体し現在の惑星の元となる原始惑星が作られます(下図③)。このとき,火星辺りまでは,円盤中の水が太陽エネルギーにより水蒸気となり,火星より外側では円盤中の水は氷となっています。この境界をスノーラインと呼びます(太陽からおよそ2.7天文単位。1天文単位はおよそ1.5億kmです)。惑星ができるためには,チリなどが固まる必要があります。したがって,地球型惑星が作られる円盤の成分は岩石や金属が主なものになります。スノーラインの外側では,水が固まった氷があるため,氷が含まれる惑星となりました。また,円盤中のガスの量は外側へ行けば行くほど増えます。したがって,氷となった水とあわせて,どんどん大きくなります。その結果,大きな木星や土星が作られたのです。しかし,天王星型惑星にはガスがあまりなく主に氷です。木星や土星で多くのガスが使われたりしたためと考えられます。つまり,天王星型惑星は木星型惑星の後にできあがったと考えられるのです(下図④)。



現在では,スーパーコンピュータ(例えば日本が誇る“京”)を使ったコンピュータサイエンスの飛躍的な発展により,シミュレーションで太陽系の惑星を作ろうとしています。そして,これまで考えてきたことや観測結果,そしてシミュレーションをあわせることにより,太陽系の惑星や太陽以外の恒星にある系外惑星がどうやってできのたかという研究が発展します。系外惑星のことがわかってくると,それは地球以外の天体に生命体がいるのかどうかの研究につながります。
科学館の階段壁を見た時には,太陽系がどのようにできたのか,考えてみると楽しいかもしれません。


日本が世界に誇るスーパーコンピュータ“京”