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科学のお話

2012年3月1日(木)

懐かしの理科室シリーズ その2 ~日本発の実験器具~

 理科の実験ではたくさんの実験器具を使いますが,そのほとんどがヨーロッパをはじめとした外国で開発されたものです。そのため,多くの実験器具には外国の名前がついています。
 例えば『ビーカー』は注ぎ口のとがった部分が,ワシやタカなど猛禽類(もうきんるい)のくちばし(英語でbeak=ビーク)に似ているのでこの名前があります。『フラスコ』はスペイン語・ポルトガル語のビンとか酒ビンをさすfrasco(フラスコ)が語源になっています。戦国時代に南蛮人が持ち込んだ洋酒を入れるビンがもとになっています。
 『試験管』は日本語ですが,英語のtest tube(テスト・チューブ)をそのまま直訳したものです。



 実験に使われている器具の中には,日本で作られたものはないのかと思ってさがしてみたらありました。その名も『駒込(こまごめ)ピペット』。理科の実験で少量の液体を加えるのに使ったあれです。先生はスポイトと呼んでいたかもしれませんが正式な名前は駒込ピペットです。この『駒込』は,現在の東京都立駒込病院の駒込からきています。

 それ以前に,少量の液体をはかりとる器具はホールピペットしかありませんでした。このホールピペットは,片側を口にくわえて,ストローのように液体を吸って使用します。少し多めに液体を吸っておいて,吸い口を指で押さえ,その指をゆるめてゆっくり液をおとし,規定の量をはかりとります。このホールピペットを使うと,少量の液体を正確にはかりとることができます。

 

 しかし,ホールピペットは高価である上に,伝染病患者から病原菌入りのサンプルを採取して扱う必要のあった駒込病院では口でくわえて使うことに抵抗がありました。そこで,当時の院長・二木謙三(ふたきけんぞう)が,正確な量ははかれなくても安くて安全な器具をと考案したのが駒込ピペットです。これならゴムの力で液体を吸い上げるので,まちがって液を飲み込む心配もありません。現在,駒込ピペットは世界中の学校や研究施設で使われ,英語やドイツ語でもKomagome Pipette(コマゴメ・ピペット)と表記されています。

 なお,駒込ピペットを考えた二木謙三は,病原菌の研究に関してたくさんの業績を残し,ノーベル生理学・医学賞の候補になったとも言われるほどの人です。それにもかかわらず大変に謙虚な人で,新型病原菌を発見しても,患者の名前(コレラ竹内菌)や,ピペットと同じく勤めていた駒込病院(駒込A菌・B菌)の名前をつけ,自分の名前を使うことはまったく考えませんでした。もしそうでなかったら『二木ピペット』になっていたかもしれませんね。

 さて,これ以外にも,日本発の実験器具があるかもしれません。みなさんもさがしてみて下さい。

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